HOME >> 相続・遺言マニュアル >> 遺言の種類
民法の定める遺言の方式には普通方式 3種類、特別方式 4種類があります。
普通方式 | 自筆証書遺言 |
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公正証書遺言 | |
秘密証書遺言 | |
特別方式 | (一般)危急時遺言 |
伝染病隔離者の遺言 | |
在船者の遺言 | |
船舶遭難者の遺言 |
自筆、すなわち自分で直接書く形式の遺言です。
自分で書くわけですから、筆記具と用紙さえあれば、いつでも、どこでも容易に費用なしに作成できます。また、遺言をしたこと、遺言の内容、全て秘密にできます。
逆に、自分で書くということは、法の定める方式に違反し、有効な遺言と認められない可能性も生じます。また、方式上は有効な遺言と認められても、その内容が法律的に不明確なものがあったりして、自分の意思が結局反映されないこともあります。
また、秘密にできることの裏返しとして、遺言書を発見してもらえなかったり、たまたま発見した人物に遺言を隠匿されたり、破棄されたりするおそれがあります。
なお、自筆証書遺言は家庭裁判所での検認手続きが必要です。検認手続きを経ていない自筆証書遺言によっては、遺言書の内容を実現することはできません。たとえば、不動産の登記手続は受け付けてもらえません。
【自筆証書遺言の注意点】
※有効な遺言書を作成するにはその他にも厳格な決まりがありますので、作成にあたっては十分な注意が必要です。
自筆証書遺言は自宅で保管されることが多く、遺言書の紛失、相続人等による隠匿・破棄・改ざん等のおそれがあります。その対応策として令和2年7月10日から法務局が自筆証書遺言を保管する制度がスタートしました。公正証書遺言作成より費用が安く済むこと、自筆証書遺言に通常必要な相続発生後の家庭裁判所による検認が不要になるなどの特長があります。但し、この制度は法務局が遺言の有効性を確認する制度ではありません(法務局は日付の誤り,署名・押印もれ等の形式審査のみ行う)。法務局に保管してもらっているからといってその遺言が必ず法律上有効と認められるわけではありませんのでご注意下さい。
公正証書遺言は法律専門家である公証人に依頼して作成する遺言をいいます。
公正証書遺言は法律専門家である公証人が作成するため、方式、内容が無効になる可能性が他の方式に比べて低いといえます。遺言者の意思を実現するためにもっとも確実かつ安全な方式です。
第三者が関与することになるため、遺言をしたこと、遺言の内容を秘密にはできません。一方、公正証書遺言は原本が公正証書役場で保管されるため、遺言が発見されないというおそれはなく、隠匿・破棄のおそれもありません。
デメリットとしては、公証人に依頼するため、費用がかかること、作成手続が厳格(たとえば証人が2人以上必要)であり手間がかかることが挙げられますが、遺言の内容を確実に実現するための必要な経費、手続ですので、せっかく遺言を作成するのであれば、この方式によることをおすすめします。
なお、公正証書遺言は家庭裁判所での検認手続きが不要です。ただちに遺言内容の実現ができます。この点は公正証書遺言の大きなメリットです。
【作成方法】
最終的な文案が確定したら、遺言者、公証人、証人(2人以上)が一堂に会して遺言書の作成を行います。
なお、遺言者が公証役場に赴くことが困難な場合には、公証人が遺言者の自宅や病院に出向いて作成してもらうこともできます。また、遺言者が署名の自筆や押印が困難な場合、公証人が代書したり、代わって押印することも認められています。
遺産額 | 手数料 |
---|---|
1,000万円 | 28,000円 |
5,000万円 | 40,000円 |
1億円 | 54,000円 |
おおよその額です。
詳しくは以下の日本公証人連合会のサイトにて、「3公正証書遺言の作成」の中の「Q7公正証書遺言の作成手数料は、どれくらいですか?」の項目をご確認ください。
・日本公証人連合会(https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow02)
公証人役場で公正証書遺言を作成すると、遺言者に原本が交付され公証人役場で20年間保管されます。公正証書遺言があるか否か、全国どこの公証役場でも探すことができます。遺言者が生前に遺言書を作成したはずだが、発見できないような場合はお近くの公証人役場で確認することをお勧めします。なお、遺言者の生前は、遺言者のみが検索・照会を依頼でき、遺言者の死後は、相続人、受遺者が公証役場で検索・照会を依頼できます。
危急時遺言とは、遺言者が病気やその他の理由によって死亡の危機に瀕している場合に、特別な方法ですることができる遺言です(民法976条1項)。
以上のような手続きをとれば、危急時遺言ができます。
危急時遺言は、普通方式遺言の例外であるため効力発生のために、遺言が行われた日から20日以内に家庭裁判所に対し、危急時遺言の確認請求を行う必要があります。家庭裁判所は、遺言者の最終意思が遺言書に反映されていることの確認ができた場合に限り確認の審判を行い、これによって初めて危急時遺言は効力を持ちます。
また、遺言者が死亡した後には、効力が発生した危急時遺言について、家庭裁判所で検認の手続きを行う必要があります。
遺言者が普通方式遺言を行うことができる状態になってから6ヶ月間生存したとき、危急時遺言は効力を失います。
遺言として何を書くかは、遺言者の自由です。しかし、遺言として法的効力を生じる事項は民法で定められています。これを遺言事項といいます。以下では主なものを列挙します。
遺言事項以外について遺言書に書くことも出来ますが、法的効力はありません。例えば、亡くなった夫が「妻と長男が同居すること」と遺言に書いても、長男が必ずそれに従う法的義務を負うことはありません。もっとも、遺言事項以外に財産の分配の理由や遺族それぞれへの言葉などを記載することにより、遺産分割が円滑に進み、相続争いが回避されるケースもあります。
最近では遺言ではできないことや遺言書以外に家族に伝えておきたいことがある場合、遺言書とは別に「エンディングノート」を作成する方も増えてきました。
「エンディングノート」とは、あなたが人生の終末を意識して自身の希望を書きとめておくものをいいます。自分の人生を振り返りお世話になった方々に感謝の言葉を記したり、自分の生活歴や交遊歴、人生観を記したり、また、死亡時の葬儀や法要、お墓や仏壇の管理、供養、死後の遺品整理、相続調査にかかる事項等を記したり、記載事項などについて特に決まりはありません。遺言と異なり、ノートに記載された内容が直ちに法的な効力を発生させるものではありません。しかし、遺品整理や相続調査は、残された遺族の方にとっての負担を大幅に軽減することができますし、また、ノートに記載されたメッセージや被相続人の配慮の言葉により、相続人間の感情的な軋轢を解消し、円滑な遺産分割を可能とすることにも繋がります。