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相続は亡くなられた人の財産を誰かに継承する制度で、誰が承継するかは民法でその範囲と順位が画一的に決められています。
相続人は順に(1)被相続人の子もしくはその代襲相続人、(2)直系尊属、(3)兄弟姉妹であり、配偶者は常に他の相続人と同順位の相続人であることが定められています。配偶者以外の者は先の順位者がいる場合、相続人になりません。
養子や養子に行った子(特別養子を除く)も法定相続人となります。
又、婚姻外で生まれた子(非嫡出子)も法定相続人になれますが、父親の相続に関しては父親が認知することが条件です。
戸籍上の夫婦関係ではない内縁関係では民法890条の相続人となりません。
胎児は相続できるのか(民法886条)
胎児は未だに生まれていないので権利の主体になれないのが原則ですが、相続に関しては既に生まれたものとみなされ、相続できることになっています。但し、胎児が死亡して生まれた場合は、適用されません。
代襲相続とは、被相続人の財産を相続する者が、すでに亡くなっている等の理由で相続できない場合に、本来なら相続権があった者からさらにその相続権を承継する制度です。
たとえば相続開始のときに、被相続人の子がすでに亡くなっていても、その子に子(被相続人の孫)がいれば、親に代わって相続することができます。
代襲相続人になれるのは、被相続人の直系卑属と甥・姪だけです。なお、相続欠格や相続人の廃除によって相続権を失った場合は代襲相続されますが、相続放棄した場合は代襲相続されません。
法定相続人の範囲に入っていても相続人になれない場合すなわち、相続権を失ってしまう場合があります。「欠格」と「廃除」という制度です。
故意に被相続人や他の相続人を死亡に至らせたり、遺言書を破棄・捏造するなど同条に規定された重大な不正行為(相続欠格事由)を行った者は、法律上当然に相続人としての資格を失います。また、遺贈を受けることもできません。
(民法891条の欠格事由)
被相続人が推定相続人から虐待や重大な侮辱を受けたりした場合等に、被相続人の意思で、推定相続人から遺留分を含む相続権(相続資格)を剥奪する制度です。
被相続人が推定相続人に財産を与えないとの遺言書を作成したとしてもその者の遺留分まで奪うことはできませんが、この制度を利用すれば一定の事由の下では相続人としての資格を完全に奪うことができます。また、欠格制度との違いは被相続人の意思によって相続人としての資格を剥奪する点です。
廃除の手続きは、(1)被相続人が生前に自ら家庭裁判所に申立てを行うか、(2)遺言書で廃除の意思表示を行いその死後遺言執行者が家庭裁判所に申し立てを行う方法があります。 また、廃除の要件としては、単に「親不孝だ」「あいつはかわいくない」といった理由では廃除は認められず、民法892条所定の事由が裁判所で認定されることが必要です。具体的には、被相続人に対する虐待や重大な侮辱を行った場合、その他著しい非行があった場合が認められる必要があります。
【祭祀を主宰すべき者】
祭祀主宰者とは、葬儀・法要など祖先の祭祀を主宰する人のことをいいます。系譜、祭具及び墳墓(祭祀財産)は相続財産にならず、祭祀主宰者が承継します。具体的には、墓地、墓石、位牌、仏壇などを受け継ぎます(民法897条)。祭祀承継者は、①被相続人の指定により決まりますが、指定がなければ②その地方の慣習にしたがって、慣習が明らかでないときは③家庭裁判所で決めることになります。祭祀財産の承継は相続とは無関係であり、相続分に影響しません。もちろん、共同相続人間の協議により、祭祀を主宰していくにあたっての費用・手間等を考慮して、祭祀主宰者の相続分を多くすることは可能です。
【喪主】
家制度が存在した戦前は戸主が喪主を務めました。現代では、喪主を誰が務めるかは法律上決まっていません。喪主を共同相続人中の誰が務めるかは自由ですし、喪主をおかない葬儀ももちろん自由です。喪主を誰が務めるかは相続とは無関係です。喪主を務めたからといって相続分が増えるということもありません。
【葬儀費用】
儀費用は誰が負担するかについて、法律上の定めはありません。葬儀では、喪主が決まっていることが多いですが、喪主が葬儀費用を全て負担することは相続人間の公平を欠きます。そこで、まず①香典から葬儀費用を充当し、香典だけでは不足する部分は②相続財産に関する費用に準じて相続財産から充当し、③それでも不足すれば、共同相続人が各自の相続分に応じて負担することが公平であると考えられています。