相続・遺言マニュアル

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弁護士法人 一宮総合法律事務所

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遺言事項

遺言として何を書くかは、遺言者の自由です。しかし、遺言として法的効力を生じる事項は民法で定められています。これを遺言事項といいます。以下では主なものを列挙します。

  1. 身分に関する事項:認知(781条2項)
  2. 相続および財産処分に関する事項:相続人の廃除又は廃除の取消(893条、894条)、相続分の指定または指定の委託(902条)、特別受益の持ち戻しの免除(903条3項)、遺産分割方法の指定または指定の委託(908条)、遺贈(964条)遺言執行者の指定または指定の委託(1006条)

遺言事項以外について遺言書に書くことも出来ますが、法的効力はありません。例えば、亡くなった夫が「妻と長男が同居すること」と遺言に書いても、長男が必ずそれに従う法的義務を負うことはありません。もっとも、遺言事項以外に財産の分配の理由や遺族それぞれへの言葉などを記載することにより、遺産分割が円滑に進み、相続争いが回避されるケースもあります。

最近では遺言ではできないことや遺言書以外に家族に伝えておきたいことがある場合、遺言書とは別に「「エンディングノート」を作成する方も増えてきました。

「エンディングノート」とは、あなたが人生の終末を意識して自身の希望を書きとめておくものをいいます。自分の人生を振り返りお世話になった方々に感謝の言葉を記したり、自分の生活歴や交遊歴、人生観を記したり、また、死亡時の葬儀や法要、お墓や仏壇の管理、供養、死後の遺品整理、相続調査にかかる事項等を記したり、記載事項などについて特に決まりはありません。遺言と異なり、ノートに記載された内容が直ちに法的な効力を発生させるものではありません。しかし、遺品整理や相続調査は、残された遺族の方にとっての負担を大幅に軽減することができますし、また、ノートに記載されたメッセージや被相続人の配慮の言葉により、相続人間の感情的な軋轢を解消し、円滑な遺産分割を可能とすることにも繋がります。

遺言書の種類

民法の定める遺言の方式には普通方式 3種類、特別方式 4種類があります。

普通方式 自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言
特別方式 死亡の危急に迫った者の遺言
伝染病隔離者の遺言
在船者の遺言
船舶遭難者の遺言

特別方式については、かなり特殊なケースであり、一般の方は普通方式のいずれかによる遺言をすることになります。以下で 各普通方式のメリット・デメリット ・作成の注意点などを概説します。

 

自筆証書遺言

自筆、すなわち自分で直接書く形式の遺言です。
自分で書くわけですから、筆記具と用紙さえあれば、いつでも、どこでも容易に費用なしに作成できます。また、遺言をしたこと、遺言の内容、全て秘密にできます。

逆に、自分で書くということは、法の定める方式に違反し、有効な遺言と認められない可能性も生じます。また、方式上は有効な遺言と認められても、その内容が法律的に不明確なものがあったりして、自分の意思が結局反映されないこともあります。

また、秘密にできることの裏返しとして、遺言書を発見してもらえなかったり、たまたま発見した人物に遺言を隠匿されたり、破棄されたりするおそれがあります。

なお、自筆証書遺言は家庭裁判所での検認手続きが必要です。検認手続きを経ていない自筆証書遺言によっては、遺言書の内容を実現することはできません。たとえば、不動産の登記手続は受け付けてもらえません。

【自筆証書遺言の注意点】

  • 遺言全文、日付、署名を必ず遺言者が自分で書き、押印しなければいけません。
    パソコンで作成されたもの、他人が代筆したものは無効です。一般的な文書のように署名だけを自筆にしても有効な遺言書にはなりません。全文を手書きする必要があります。
  • 誰にどの財産を相続させるかを明確に特定する必要があります。不動産については登記で確認してその表示をそのまま記載してください。不動産の特定も遺言内容ですので、自筆する必要があります。印刷物のコピーでは無効になります。
  • 日付については必ず具体的な日を記入する必要があります。
    例えば「平成24年3月」「平成24年3月吉日」といった記載では具体的な日が記入されたとはいえません。「平成24年3月1日」というように記入する必要があります。
  • 署名については自署が必要です。押印も必要ですが、印鑑登録済みの印章や銀行届出印である必要はありません。

※有効な遺言書を作成するにはその他にも厳格な決まりがありますので、作成にあたっては十分な注意が必要です。

公正証書遺言

公正証書遺言は法律専門家である公証人に依頼して作成する遺言をいいます。

公正証書遺言は法律専門家である公証人が作成するため、方式、内容が無効になる可能性が他の方式に比べて低いといえます。遺言者の意思を実現するためにもっとも確実かつ安全な方式です。

 

第三者が関与することになるため、遺言をしたこと、遺言の内容を秘密にはできません。一方、公正証書遺言は原本が公正証書役場で保管されるため、遺言が発見されないというおそれはなく、隠匿・破棄のおそれもありません。

なお、デメリットとしては、公証人に依頼するため、費用がかかること、作成手続が厳格(たとえば証人が2人以上必要)であり手間がかかることが挙げられますが、遺言の内容を確実に実現するための必要な経費、手続ですので、せっかく遺言を作成するのであれば、この方式によることをおすすめします。

なお、公正証書遺言は家庭裁判所での検認手続きが不要です。ただちに遺言内容の実現ができます。この点は公正証書遺言の大きなメリットです。

【作成方法】

弁護士に依頼される場合には、弁護士と協議の上、遺言内容を確定し、弁護士が遺言内容の原案を作成します。公証人には原案及び戸籍謄本等必要書類を提出し、内容の検討及び確認をおこなってもらいます。

公証人が最終的な文案を作成したら、遺言者、公証人、証人(2人以上)が一堂に会して遺言書の作成を行います。

【参考】公証人手数料目安 相続人一人の場合

遺産額 手数料
1,000万円 28,000円
5,000万円 40,000円
1億円 54,000円

おおよその額です。詳しくは以下のリンク先でご確認ください。
日本公証人連合会ホームページ

【公正証書遺言検索サービス】

公証人役場で公正証書遺言を作成すると、遺言者に原本が交付され公証人役場で20年間保管されます。公正証書遺言があるか否か、全国どこの公証役場でも探すことができます。遺言者が生前に遺言書を作成したはずだが、発見できないような場合はお近くの公証人役場で確認することをお勧めします。なお、遺言者の生前は、遺言者のみが検索・照会を依頼でき、遺言者の死後は、相続人、受遺者が公証役場で検索・照会を依頼できます。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言者が作成した遺言書を封印した上で公証人と証人(2人以上)の前に提出して、自己の遺言であることを証明してもらう遺言です。

秘密証書遺言は自己の作成した「遺言」であることを証明してもらうだけのものであり、遺言の内容を秘密にできるというメリットはありますが、方式・内容を専門家が確認しないため自筆証書遺言同様に、有効な遺言と認められず無効になってしまう可能性があります。また公正証書遺言と異なり、公証人が原本を保管しません。遺言者が自ら保管する必要があります。したがって、不発見、隠匿、破棄のおそれも残ります。

にもかかわらず、費用はかかりますし、家庭裁判所での検認手続も必要です。

自筆証書遺言に比べて遺言の存在を秘密にできるというメリットがありますが、上記のデメリットが大きく、秘密証書遺言はあまり利用されていません。

【各方式の遺言のメリット・デメリット】

遺言書の方式 メリット デメリット
自筆証書遺言
  • 作成が容易
  • 費用がかからない
  • 遺言の存在・内容を秘密にできる
  • 遺言書が無効になるおそれ
  • 意思が反映されないおそれ
  • 遺言を発見してもらえない
  • 隠匿・破棄のおそれ
  • 検認手続きが必要
公正証書遺言
  • 形式の間違いで無効になることはない
  • 内容についても無効になる可能性は低い
  • 遺言書の不発見や隠匿、破棄のおそれがない
  • 信頼性と安全性
  • 検認手続が不要
  • 秘密にできない
  • 費用がかかる
  • 厳格な手続
    (証人2人以上の立会等が必要)
秘密証書遺言
  • 内容を秘密にできる
  • 費用がかかる
  • 公正証書遺言と同じような厳格な手続が必要
  • 公正証書遺言とは違い、無効になる可能性が自筆証書遺言同様にある
  • 検認手続必要

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